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<<第4夜
アマ無線千夜一夜物語(第五夜) 97/03/12 01:47
昔々、我が帝国海軍は縦振れキーを使用していた。バッグ・キーな
どの柔なキーは、ドカンと一発撃ったとたん符号がよけいに出ると
困るためだったそうだ。しかし、パープルで完璧に解読されていた
のだから、短点ひとつくらいよけいに打って敵さんを混乱に陥れた
方がまだましのような気がするが........。この観点からすれば、
旧海軍に徴用したいオペレータが7MHzに沢山いるな。
ストレート・キー(Straight Key)は、別名ポンプ・キー(Pump Key)
とも言う。英語圏にはこのどちらかで通用する。毎年12月の大晦日
にストレートキー・ナイトという、W主催の短いQSOパーティがある。
当局はアルコール変調でまだ参加したことがない。このパーティの
趣旨は、普段エレキーで運用しているため、シャックの片隅で埃を
被っていて日頃かえりみられる事のないストレート・キーを取り出
し、マルコーニの昔を偲びながら交信するというものだ。賞の中に
は、参加者の投票で、一番品位の高い符号を打っていた局に与えら
れるアワードもあるらしい。日本から誰か参加してほしいものだ。
ストレート・キーは入門用には向かない。いまだに入門には縦ぶれ
電鍵などと見当はずれを言う半可通がいるので困る。電信入門者が
まず頭に叩き込まなくてはならないのは、A,B,C...の符号もさるこ
とながら、正確な1:3の符号の感覚である。この感覚を養うにはエレ
キーを使うのが最も早い。晴海のハムフェアでリバモアから来た
NCDXCの友達を案内したとき、入門コーナーと称してみんなが縦ぶれ
電鍵を使っているのを見て、日本はいまだに入門に使っていると
説明したら驚いていた。
ストレート・キーの位置づけは微妙なものがある。現代のオペレー
ションつまりコンテストやDXハンティングのレース、また長時間の
オペレーションでの疲れといった事を考慮すれば、ストレート・
キーは非常に不利である。自分にとっての位置づけは、趣味の中の
趣味である。年に1、2回1月以上連続してストレート・キーだけ
で運用することがある。打っていてとても新鮮に感じ、出来るだけ
綺麗に打つことを心がけている。
ストレート・キーだけは国産に勝るものはない。ハイモンド社の
HK-802にとどめを刺す。構造的に絶対ガタの出ない構造、接点の当
たりの柔らかさ、真鍮のヘアーラインのフィニッシュによる外観の
良さ、ノブの持ち易さ、台が木製で軽いと思えばそれを裏切る充分
な重量、全てに渡り外国製、日本製問わず他の追随を許さない。
正確で1時間以上連続して打っても疲れない打ち方を以下に紹介す
る。これをマスターすれば腱鞘炎になることもない。図が書けない
ので記述で説明する。
短点を打つ瞬間:
1)手首の上側の位置がノブの頂点とほぼ同じ位置。つまり手首の位
置がだいぶ下がる。
2)短点の送出は、人差し指、薬指の第一関節より前の筋肉を使う。
それ以外の筋肉は関与しない。(高速送信が出来るかどうかの分
かれ目で非常に重要)
3)手首を下げた結果、親指は若干(5mm-10mm)くらい前に出る。
長点を打つ瞬間:
1)手首の下の位置がノブの頂点とほぼ同じ位置。つまり手首の位
置がだいぶ上がる。
2)長点の送出は、指先から手首までを軽く緊張させ、手首で打つ感
覚を持つこと。(非常に重要)
3)手首を上げた結果、親指は若干(5mm)くらい後ろに下がる。
共通事項:
1)親指の腹は、操作に伴いノブに軽く触れる事がある。決して親指
でノブを押さえ込まないこと。最悪の結果になる。
2)右肘は約90度に曲げている。これは通常の机の高さより10cm位低
い位置にキーが置かれる事を意味する。低い位置を確保すること。
3)肘から先はほぼ水平を保つこと。
4)指と手のひら全体で、小さめの卵を包み込むような感覚。
5)人差し指と中指の先端部は、常にノブに対して垂直。
6)ノブと指先の接触位置は、ノブの奥1/4くらいの位置に乗せる。
7)汗をかきやすい人は、ノブを布で覆ってもよい。
8)最初は、決して早く打とうとしない。
ストレート・キーをまともに打てないでCWマンを自称するあなた。
あなたに送る今夜のプレゼントです。おやすみ。
de JP1PXB/JA1VJQ
3/12/97